「同意」を求められたとき ~言葉の後ろの気持ちにアンテナを向けてみる~

ある研修会で出たご質問です。

夫に対する愚痴で、「そんな言い草ってないじゃないですか!」と言われたとき、同意するわけにもいかないし、なんと言っていいのか分からなくて、曖昧にうなづいただけになってしまいました。共感を伝えなければという思いはあったのですが、どう言えば伝わるんでしょうか。

そうですよね。

支援者が相談者と同じ気持ちになって「そりゃあそうよね。そんなこと言われたら、誰だって傷つきますよね」なんて言ってしまったら、相談者が解決するべきご夫婦の問題に、支援者が巻き込まれてしまいます。支援者が「どちらの言い分が正しいか判断して、喧嘩を仲裁する」役割を取るのはNGです。(これは、兄弟げんかの場面で親がしてしまいがちな失敗と同じです。)
うなづきも、曖昧な感じで「必ずしも同意しているわけではない」ニュアンスが伝えられたので、よい対応だったと思います。

もう一歩進めるとしたら、相談者が「そんな言い草ってないじゃないですか」という言葉で支援者に分かってほしい気持ちは何だろう、という部分に関心を向けてみるとよいかもしれません。たとえば・・・
「そう言われると、どんな感じがするんですか?」と聞いてみましょう。
「なんだかバカにされた感じがして、ムカつくんですよ!」といった気持ちが出てきたら、
「ああ、バカにされた感じがするんですね。それでムカつくんだ」と、共感を伝えやすくなります。

共感とは、相談者の「感じていること」に寄り添うことなのだと思います。

出来事の話から気持ちの話にシフトできれば、
「そのムカムカの中身は、なんなんでしょうね。どんな気持ちが詰まっているんでしょう・・・」といった具合に、相談者が日頃たまったいろいろな思いを存分に話せる場が生まれるかもしれません。

もちろん、気持ちを聞いても出来事ばかりしゃべって、なかなか気持ちが出てこないケースも多いと思います。
「そう言われると、どんな感じがするんですか?」
「だって、私はいつも~~してあげてるのに、彼はこんなこと言うんですよ」
「今、そう話していて、胸にはどんな感じがわき上がっているんでしょう・・・」
「・・・だって・・・だって、せめて、ありがとうって言ってくれたら・・・」
「ああ、ありがとうって言ってくれたら少しは気持ちがおさまる感じなんですね。ありがとうって言ってもらえないと、どんな気持ちになるんですか?」

とはいえ、気持ちを話すことは大きなリスクを伴うことなので、心を無理やりこじ開けるような関わりをしないことも重要です。
怒りの背景には、子どもの頃に受け入れてもらえなかった感情が色濃く残っていることが多く、それを「感じない」ことにして封印してきた歴史を持っている人が少なくありません。封印を解けば、その頃のつらい気持ちがよみがえってしまうかもしれないから、怖くて開けられない・・・そういう相談者の現実を、とことん尊重してください。
最低限秘密が守られ、相談者の痛みがケアされる保証のある安全な場でなければ、踏み込まないほうがよいですし、支援者の達成感のための相談にならないように絶えずチェックする姿勢もとても大切です。

2011年5月28日