ある講座で母乳育児についてご参加の皆さんとお話したときのことです。
ひとりの方が「自分は母乳で育てることができなかった。努力してもどうしても足りなくて、結局ミルクになってしまい、『あきらめが早すぎたのではないか』『あのときもっと努力していれば、母乳で育てられたのではないか』と、子どもが無事に成長した今も悔いが残っている」と涙ながらに発言されました。

私にも似た体験があり、当時感じた劣等感や自分を責める気持ち、屈辱感などが昨日のことのように思い出されました。

授乳に限らず、子育てに「あのとき、ああしていれば」「あのとき、あれをしなければ」と後悔することは数えきれないほどあると思います(もちろん私の子育ても失敗と後悔の連続でした)。
そんなときは、どうぞ自分に尋ねてみてください。

それをしなかったことで、得られたものはな~に?

母乳で育てようとがんばるのをあきらめたことで得られたもの
 乳房のケアや搾乳などに割く必要がなくなったたくさんの時間と労力
 そのための器具や助産院などの通院に使わなくてよくなったお金
 出ない母乳と格闘する苦痛からの解放と心のゆとり
 などなど・・・

あきらめたからこそ、子どもとおだやかに接する時間が増えたかもしれません。
もっと努力していたら、イライラして子どもや夫にあたったり、過労でからだを壊したり、うつ病になったりしていたかもしれません。
「これ以上がんばらない」という選択で自分を守れたことが、子どもが育つ幸せな家庭環境を守ったのかもしれません。

どんなことにも、いろいろな側面があります。
IT全盛の今日、他の人のうまくいった話(いわば自慢話)に触れる機会も多くなり、そのようにできない自分を責めることも多くなったように思いますが、その人もまた別のことで、他の人のようにできない自分に劣等感を持っています。
全てがうまくいっているように見える人でも、ご本人の中ではそうではないことも多いですし、かりに完璧にうまくいっている人がいたとしても、自分がその人のようにならなくてはいけないわけではありません。
だって、完璧な親に育てられる子どもは、きっとつらいと思うから・・・
子どもから「ダメ出し」されるくらいの親のほうが子どもはラクで、おおらかに育つような気がします。もちろん親も、心がラクなのが一番です。

2015.6.22