イヤイヤ期のしつけを考える その2  ~「食事は座って食べる」を成功させる秘策~

「1~2歳の子が、食事中にすぐ立ち上がってしまう」というご相談も、とてもよく伺います。
対策を考える前に、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。それは

「きちんと最後まで(親が食べてほしい量を食べ切るまで)、座って食べる」ことを、「しつけ」としてこの時期の子どもに求めるのは、脳機能の発達段階として不可能  ということです。

私たちは、わき上がる欲求を満たすために即行動する脳を持って生まれてきます。お腹がすけばあらん限りの力で泣き、守ってくれる親の姿が見えなくなれば必死で追いかけ、ほしいものは他者から奪ってでも手に入れる・・・

そのおかげで、何万年の進化の歴史の中、厳しい自然界を生き抜くことができたのです。

最近の脳科学の研究によると、状況を判断して欲求をおさえ、行動をコントロールする脳(前頭前野という部分)が働き始めるのは3歳ごろからだそうです。

ですからそれ以前の子は、食べている途中でも、食べること以上に興味をひかれる何かを見つければ即座にそれをしないではいられません。言い聞かせて、わからせて、座らせておくことはできないのです。

8か月の子に立って歩くように言い聞かせても、歩けないのと同じです。

というわけで今回のテーマ、「座って食べる」を成功させる秘策は、好奇心とやる気に満ちあふれた子どもにとって、食卓が他のどんなことよりうれしく楽しく、おもしろい場になるようにすることです。

チェックしましょう!

  1. 腹ペコで食卓についていますか?
  2. 親が口に運んであげるものとは別に、子どもが自由にできる食べ物が子どもの前に出ていますか?
  3. 何をどのように食べるか、食べないか、子どもの意思で選択できるようにしていますか?
  4. 座っていると手が届かないところにあるものに子どもが興味を示したとき・・・
    その「気持ち」を受けとめ、肯定的に反応していますか?
  5. 親も一緒に食べ、ワクワクする会話がありますか?
  6. ママ自身が、食事を楽しんでいますか?

いかがでしょうか・・・
なかなかむずかしいかもしれませんね。

②をさせると、服や部屋がよごれて後始末が大変かもしれません。
けど、せいぜい数か月で卒業します。

③をやっていると栄養のバランスが悪くなるし、量的に不足するのではないかと不安にもなると思います。
けど、人類の歴史の中でいつでもバランスよく十分な量の食糧を手に入れることができるようになったのはつい最近のこと。私たちはみんな、理想的ではない環境に適応する体の仕組みを持っています。

最大のポイントは、④と⑤です。

たとえば親のおかずをほしがったら、箸で口に運んであげましょう。
アルコールを除けば、この年齢であげてはいけないものはほとんどありません。味や硬さなどが受け入れられなければ、子どもが自分で吐き出しますから経験するのもいいと思います。

「むし歯菌がうつる」と気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、箸につくくらいの菌は日ごろのおしゃべりなどで飛び散るしぶきにも含まれています。

ガラスや瀬戸物も、持ちたがるなら持たせてみましょう。乱暴に扱うと割れることは、言っても理解できませんが、経験すれば慎重に扱うようになります。小さなケガも、大きなケガをしないために必要な経験です。

絶対に割られては困る大事な食器とか、タバコやお酒など絶対にダメなものなどは、「手が届かないところ」ではなく「見えないところ」に置きましょう。ダメなことを理解して我慢できる年齢(少なくとも3歳以上)になるまで、少々面倒でも前頭前野が発達している大人が我慢するしかありません。

テレビを見たい、おもちゃで遊びたいなど食事以外のことに関心が行くときは、あえてその話題で盛り上がりましょう。叱って制止しようとすると、かえって執着します。
どんなにそのおもちゃが素敵なのか、そのテレビ番組にどんなに惹かれるのか、とことん楽しく共感を伝えてください。

「~したい」という気持ちは、親に受け取ってもらえると手ばなせることも多いものです。

親との楽しい会話(気持ちのやり取り)が弾んで、おもちゃやテレビより食卓にいる方が楽しくなれば、もうしばらく座っていられます。

それでも「食卓」に飽きたら・・・
食べさせたい量を食べていなくても、快く「ごちそうさま」にしてください。

「快く」が何より大事。
嫌味を言ったり怒りのオーラが出てしまったりすると、ここまでの努力が台無しになります。
あなたはするべきことをちゃんとやったのですから、ダメな親ではありません。

食べ物の不足や偏りは、長く続かなければ発達に支障をきたすことも健康を害することもありません。
体が必要とするものは奪ってでも摂るのが生物の本能ですから、食卓が楽しければ(強制や叱責などで心理的に食べられない状況でなければ)、必要なものを食べない状態が長く続くことはありません。

「大丈夫!」と自分に言って、心はずむ食事場面をつくってください。

2018.7.21