子どもの「震災ごっこ」 ~子どもの心のケアは誰がするのか~

先日、首都圏の保育関係者が集う研究会で震災をテーマに話し合う機会がありました。

子どものケアとして、遊びを保障するサポートが重要であることは言うまでもなく、そのためのボランティア活動の展開は急務です。

ただ、一時的・単発的なボランティア活動には限界があると思います。日常的にずっとかかわっていくのは親なのですから、親御さんが子どもの不安を受け止め、支えて行かれる力をつける必要がありますし、そのためには親御さん自身の心が支えられラクになることも必要です。
子どもが示す多彩な反応を、傷つき不安な心のサインとして受け止めるには、ちょっとした「知識」をもつプロの存在が欠かせません。

私たちはとても怖い経験をしたとき、そのことを人に話したくなるものです。都心の学生に地震の体験についてたずねたら、「地下街の店でアルバイトをしていて、ものすごく怖かった」と話してくれました。

「そのことを誰かに話した?」
「はい。帰ってすぐ、家族に話しました」
「そうね、怖かった気持ちって、誰かに聴いてほしいですよね。他にも話した?」
「次の日、友達にも話しました」
「うん。何人ぐらい話したかな」
「う~ん、そうだな、10人以上20人未満ってとこかな・・・」
「そう、何度も何度も話したくなった・・・聴いてくれる人が10人以上いてよかったね。何度も話すうちに、だんだん動揺が収まってきたのではないかな・・・話すことで少しずつ怖かった気持ちを手放していけたのではない?」
「ああ、そうですね・・・」

言葉で話すことが十分にできない子どもたちは、それを遊びで表現します。たとえば震災ごっこ。
「津波だ、逃げろ~」と叫んで鬼ごっこのように散らばったり、緊急地震速報の口まねをしたり、そんな子どもの姿に接した大人の多くは、思わず叱ってやめさせたくなるのではないでしょうか。でもそれは、私たちが怖かった気持ちを誰かに話した時「そんな話はするな!」と怒られるようなものです。その人が怒ったのは、きっとその人自身がとてもつらくて、まだ他者のつらさを受け止める余裕がないからですが、「つらい気持ちを表出すると怒られる」という経験をすれば、子どもはつらい気持ちを心の底に閉じ込め、手放すことができなくなってしまいます。閉じ込められた気持ちは体の症状となって現れるかもしれないし、自分をいじめる抑うつ傾向や他者への攻撃性などのかたちで現れてくるかもしれません。

親御さんの気持ちが支えられ、親が子どもの気持ちを支えられるようになるために、こうした知識を持っているプロが、そこにいること。それが本当に大事なことだと思います。保育士や幼稚園教諭、子育て支援センターや集いのひろばなどのスタッフ、といった親子と直接向き合うたくさんの方々が、子どもが示す多彩な反応を理解し、適切に対応できる力をつけられるように、研修などの場を作ってほしいと思います。

2011年4月16日