ウソをつく相談者を信じる ~内容ではなく、心に寄り添って~

支援者は相談者の話をまずは受容と共感を持って傾聴し、いたわりとねぎらいの気持ちで相談者と向き合います。
対人援助職を志す人なら誰でも学ぶこと、どこにでも書いてある基本中の基本です。

ですが、もし話を聴いているうちに何かおかしい、どうもウソっぽい・・・と感じたら、あなたの胸にはどんな気持ちがわき上がるでしょうか?
時には別の情報源から、明らかにウソと分かる場合もあります。

不安や迷い、もしかしたら怒り?
不信感がつのって、支援しがたい気持ちになるかもしれません。

そんなときは、自分が思わずウソを言ったときの気持ちを思い出してみてください。
きっとそのときには、そう言わざるを得ない事情があったのですよね。

危険な物が飛んできたら反射的に身をかわすように、汗をかいたら尿を濃くして脱水を防ぐように、ウソをつくことは、私たちが生きていく中で自分を守るために身につける大事なスキルのひとつなのだと思います。

虐待など、攻撃的な人間関係の中を必死で生き延びてきた人は、受容的な家庭環境で育った人よりそのスキルを使う機会が多かったかもしれません。
いつのまにかそれがクセになっていて、受容的な関係の中でもフッと不安になると、うっかり使い慣れたスキルを使ってしまうかもしれません。

話の内容ではなく、その話をする人の「気持ち」に関心を向け、感じることに集中してみると、自然に優しい気持ちがわいてきてきます。

ウソを言わなければならないその人の「現実」を信じる。
かつて師匠から教えられたその言葉を、何度もかみしめる今日この頃です。

(2012年10月20日)