絵本「わかってほしい」と、「気持ちの本」

今朝(2016.7.23)の朝日新聞「折々のことば」で、一つの詩が紹介されています。


特攻隊に志願して訓練を受けるも病気で郷里に戻り、その翌日に敗戦を迎えたという青年が遺したものとのこと。

グサグサに刻まれ
こぼたれた人形を
もとに戻してください
(ヤスヒコさん)

筆者 鷲田清一さんは、「そして70年、状況は大きく違っても、ほぼ同じことばが若者の間から聞こえてくる」と、この短文を締めくくっています。

「わかってほしい」という絵本が、パッと頭に浮かびました。

最近ヤフーの画面で「ホラーすぎる絵本と話題になっている」という記事に触れましたが、私のコラムでも2011年3月15日にこの絵本を紹介しています。
グサグサに壊されていく熊のぬいぐるみの絵は、この詩の情景そのものです。
そしてこの絵本の最後のページは、「あいされたい」のひと言で結ばれています。

この絵本が衝撃的な内容であることは確かでしょう。
でも、そこに託されたメッセージはとてもシンプルなものです。
「わかってほしい」 ただそれだけ・・・

気持ちを受け止めてもらえず、心を徹底的に打ち砕かれて大人になった人が、長い道のりを経て見失っていた自己の尊厳(私も、愛される価値がある)を取り戻した、その過程を表現した著者MOMOさんのエネルギーに心から敬意を表します。

ただこの絵本はインパクトがありすぎて、すぐには受け入れがたい人も多いかもしれません。
もう1冊、ずっとわかりやすく同じテーマが伝わる絵本をご紹介したいと思います。

「気持ちの本」 森田ゆり 童話館出版

この本の最後のページは、次のようなことばで終わっています。

いちばん悲しいときは
気持ちがわかってもらえないとき

いちばんうれしいときは
気持ちが通じあえたとき

(2016.7.23)