広い牧場のつくり方 ~3歳までのしつけは、言い聞かせるより知恵比べ~

前のコラムで、「牧場(大人に干渉されることなく、子どもが思いのままに過ごせる場)が狭いとストレスがたまって親も子も大変だし、楽しくない」と書きました。


「そんなことは言われなくてもわかっているけど、いろいろあって、できないから悩んでるのよ!」という声が聞こえてきそうです。
今回は、つい多くなる指図(さしず)やダメ出しを減らすノウハウを書いてみます。

具体的な話をする前に、ひとつ押さえておかなければならないことがあります。

近年の脳科学の知見によれば、思いついたことや湧きあがる欲求(~したい!)を理性でコントロールする機能が働き始めるのは、およそ3歳ごろからだそうです。
大人でも「おやつを食べすぎてしまう」「やらなければと思いながら、つい先のばしする」など、欲求を理性でコントロールできないこと(わかっちゃいるけど、やめられない)はたくさんあります。
まして欲求をおさえる脳の発達が未熟な子どもに、「言い聞かせる(言葉でわからせる)」方法でしつけをする(「わかれば、できるはず」と考える)のは不可能です。

心の発達は目に見えないので、子どものしつけにはとても多くの誤解があります。
「1歳児が、食事の途中で他のことに気を取られて立ち上がってしまう」とか、「2歳児が、おもちゃを小さい子に貸してあげられない」とか・・・
それって、8か月の子がハイハイする姿を見て「このままでは幼稚園で困る」と思い、「『手をつかないで、立って歩きなさい』といくら言っても歩かないんです」と悩んでいるようなものなのです。
育て方が悪いのでも、子どもが逆らっているのでもなく、発達として「まだできない」だけ。
発達ですから、決して「このまま」にはなりません。心配しすぎないで、「とりあえず今」困ることを切り抜ける方法を考えましょう。

<「ティッシュを次々引き出す」など、危険がなく他の人に迷惑でもないこと>
「したいだけさせる」のが一番有効です。やりきれば満足して、他のことに興味が移ります。
「トイレットペーパーを際限なく引き出し、丸めて流すのでトイレが詰まってしまった」という方もいらっしゃいました。紙の切り方を教えて、上手に切れたら称賛し、「小さく切っては、流す」を繰り返したらどうでしょう。流れる様子を一緒に見て、面白がるのもいいと思います。
もったいない気がしますが、そう長くは続きません。じきに飽きて興味がなくなりますから、遊園地などに行くことを考えれば安いものです。
(十分理解力がある年長児で、水の流れに強い興味を示す子がいます。その場合は「回数を決める」など、約束をしましょう。)

<「病院の待合い室ではしゃぐ」など、他の人に迷惑なこと>
「静かにしなさい」と強く叱ると、幼い子は親のテンションに合わせてかえって興奮してしまうことが多いものです。小声で耳打ちして「ないしょ話」を楽しんだり、無言でうなずいたり、ニコニコ笑って抱きしめたり、親の「冷静さ」を伝える方法を考えましょう。
アパートの2階でドタバタ走ると階下から苦情が来るのなら、忍者ごっこで敵に気づかれない歩き方(忍び足)を教える手もあります。
もちろん自宅以外の場所で存分に走り回れる機会を確保して、走りたい欲求を満たしておくことも忘れずに!

まだまだ困ることはいっぱいあると思います。
クイズ感覚で、いろいろ試してみてください。
失敗しても、何べんかに1回でもうまくいったら、けっこう楽しいですよ!
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いいアイデアを編み出した方も、ぜひご一報ください。
楽しみにしています。

2017.3.25