「小柄な子」の金メダル

冬のオリンピックが始まりました。
初日はジャンプのノーマルヒルで、スイスのシモン・アマンが金メダルに輝きました。

彼は身長172cm、体重58kgという西洋人としてはかなり小柄な選手です。体重が重い方が坂を滑り降りるスピードが速くなりますし、身長が高い分スキーの板も長くでき、風を受ける面積も広くなるので、アマンの体格は大きなハンディといえますが、そんなことはモノともせず、抜群のバランス感覚と鍛え抜かれた筋力で栄冠を勝ち取りました。甘いマスクも含め、本当にステキです!!

彼がジャンプを始めたきっかけは、少年時代にアルペン・スキーのチームに入れてもらえなかったからとか。小柄で体重が軽いためスピードが出ない、という理由だったそうです。
さて、こんな時、大人はどんな言葉をかけるでしょうか?

「悔しかったら、いっぱい食べて大きくなろう」
「好き嫌いしないでなんでも食べたら、きっと大きくなれるよ」

そんな言葉が、聞こえてきそうな気がします。
励まし、希望を持たせる働きかけのつもりなのですが、言われた子どもはどう感じるのでしょう。
残念ですが、こうした言葉は「今あるがままの子ども」を認めない表現なので、子どもが受け取るメッセージは「小さい自分は、期待に添えないダメな子」であり、大きくなるための努力には常に自己否定とのつらい闘いがつきまとうことになります。

体格だけでなく、知的な能力や、明るく元気な性格や、そのほか様々なことで私たちは子どもに「よりよく」を求めてしまいがちです。こうした働きかけが「日本の子どもは、諸外国に比べて著しく自己肯定感が低い」という統計結果につながっていくのでしょう。
小柄でもオリンピックで優勝できるのだし、成績が悪くてもノーベル賞を取る発明ができたり、暗い性格でも芥川賞を取れたりするのですから、何が「よりよい」ことなのかなんてわからないのに、もったいない話です。

今あるがままの子どもを「そのままでいいよ」と認めてしまうと、向上心を持って努力しない子になってしまいそうな不安を感じるかもしれません。
自分はどうでしょうか?
ダメなところもいっぱいある自分を「そのままでいい」と認めてもらえたら、「それならもいいや」と向上心をなくしますか?

(2010年2月14日)