ひな段と必殺仕事人と・・・ ~たくさんの「よくないもの」との出会い~

ひな祭りの話題を読んでいて、ちょっとがっかりしてしまいました。

「ひな人形の段飾りは、封建的な身分制度を象徴するものなのでよくない」として、公立の保育園などでは飾らないところが増えてきているけれど、こんな形で日本の伝統文化が失われていくのはさびしい
・・・そんな内容でした。
以前、私の住む市の男女共同参画の勉強会でも同じ話を聞いたことがあります。市内の保育園にお子さんを通わせる保護者の方が、やはり「行き過ぎ」と嘆いておられました。
まったくです。かつて封建的な時代があったことを隠す行為は、現在の自由がたくさんの先人たちの並々ならぬ努力で築き上げられたものであることに、子どもたちが気づく機会を奪うことです。

そういえばもう一つの最近の話題に、藤田まことさんの訃報がありました。必殺シリーズは、高視聴率を長く維持した人気番組だったようですが、内容は「復しゅうを正当化し、殺人を美化している」感じがします。道徳的にはたぶんNGだと思いますが、どうしてあんなに人気があったのでしょう。

そうそう、保育園で看護師をしていたときには、さるかに合戦の結末が「さるがあやまって、かにの子どもたちは母親を傷つけた(死なないんです!)さるを許してあげる」という内容になっているのを知って、本当にビックリしました。子どもに「仕返し」を推奨するような話はよくない、ということのようです。

人はみな(もちろん幼い子どもも)、理不尽なことに出合って深く傷つき、攻撃的な気持ちになる体験をたくさん持っています。反撃したくても相手が強大過ぎてできないとき、その攻撃的な気持ちを弱い者に向けて発散する「八つ当たり」は、とてもよくあることです。必殺シリーズは、復しゅうの疑似体験でそんな負のエネルギーの発散をたすけ、現実の場面で他者を攻撃できない悔しさを吸収して、八つ当たりを防いでくれていたのかもしれません。
傷つけられたら痛い。大切なものを奪われたら怒りがこみ上げる。そういう自然な感情をありのままに感じていいのだというものすごく当たり前のメッセージが、子どもには伝わりにくい。「いけない」と教えてしまう大人がたくさんいるから。さるかに合戦は、子ども版必殺仕事人として、重要なアイテムだと思います。

厳しい暑さも寒さもなく、いつも快適な温度に保たれた環境は、理想でしょうか?
ケガをしないように、危ないものが一切ない環境、すべてのバイキンが排除されたクリーンな環境は?
ネガティブなものは避けたいのが人情ですが、避け続けることはできないのですから、「付き合い方を身につける」ことが大事。そのためには、たくさん付き合う必要があるわけだから、大人は「子どものつらさに付き合うつらさ」から、逃げてはいけないのだと思います。

(2010年3月4日)