「タカシ 大丈夫な猫」 ~事故で2本の足を失った猫の成長記録に、子育ての極意がいっぱい~

タカシは2本足の猫。交通事故で右側の前後2本の足に重傷を負って、道端に横たわっているところをケイコさんに拾われました。
負傷した足を切断する大手術を乗り越えて、今ではケイコさんとその家族の深い愛に包まれ、見守られて、何事もなかったかのように街を走り回っています。

タカシは2本足で立ち上がることを覚え、歩けなくても走れば移動できることを発見し、家から庭に出る方法を編み出し、恋もした。彼女が軽々と木に登るのを見て、タカシはじっと木を見上げ、ついには2本の足で登ることに成功します。

私が一番スゴイと思ったのは、ケイコさんたちがタカシの力を信じて、余計な手助けをしないで見守り続けたこと。
家族はみんなタカシが大好きで、心から愛しているのだけれど、2本足で立てるように支えてあげるとか、外に出たそうにしたらドアを開けてあげるとか、彼女が去った木を呆然と見上げているタカシを抱き上げて木の枝に乗せてやるとか、そういうことを一切しないで、「タカシは、この課題をどう解決するんだろう」と気をもみながらも、ただただ見守るのです。

手出しをしないからこそ、タカシは先住の猫やご近所の猫がすることを見て、自分で考え、試し、チャレンジして、どんどんできることを増やしていく。
信じるって、なんて素敵なんだろう!
これって子育ての極意だよなぁ~
読み終えて、本当にすがすがしい気持ちになりました。

(苅谷夏子 岩波書店)

2023.4.17

不適切な保育、親ならやってもいいの?  ~親が、しつけのために罰を与えることを禁止する法律が施行されたことを知っていますか?~

保育施設での「不適切な保育」の報道が続いています。大多数の保育者は過酷な労働環境の中でも努力と工夫を重ねて「適切な保育」をしているのに、「被害を訴えられない幼い子を預けるのは怖い」と思って就業をあきらめてしまう保護者が増えるのではないかと心配です。

私は3人の子どもを保育園に預けて働いてきましたが、親も余裕がなくイライラして「不適切な養育」をしまうことはありました。それでも、保育士さんがわが子とかかわる様子や絶妙な言葉かけなど、「適切な保育」を見たり聞いたりすることでどれほど学ばせていただいたかわかりません。子どもと離れて仕事に没頭できる時間があることも、ストレス対策になっていたと思います。

保育士による虐待をテーマにした報道番組で、てい先生が対策の一つとして保育室にカメラを設置することを推奨していました。保育士を監視するためではなく、ドライブレコーダーのように何かあったときに、何があったのかを確認するために。
「なるほど」と思いました。
例えば危険な状況をとっさに回避するなど「正当な理由がある」場合も、それを証明できますし、何よりも経験が浅い保育士さんが、子どもに指示が通らないといったむずかしい場面で先輩はどのようにするのか、「適切な保育」を見て学ぶ最高の教材にもなると思うのです。
そして親も、それを見せていただくことができたらどんなにいいでしょう。

人手不足の最大の問題点は、先輩が経験を重ねて習得したスキルが仲間に共有される機会が失われてしまうことなのかもしれません。
親も同様に、適切な保育や養育ができる先輩の技を見る機会が減っています。

2020年、親による体罰を禁止する法律が施行されました。叩く・つねるなどの身体的な暴力だけでなく、子どもの心を傷つける言葉による脅しや、閉じ込める・閉め出す・放置するなど「罰を与える行為」のすべてが法律で禁止されているのです。保育士がしたら犯罪なのに、親ならしてもいいわけがありませんから、当然のことです。

ですが、多くの親から「じゃあ、言っても聞かない子にはどうしたらいいんですか? しつけはしなくていいんですか?」といった怒りにも似た戸惑いの声があがっています。
「しつけとは、罰を与えて大人の言うことを聞くようにさせること」という思い込みが、広く深くたくさんの人の間に浸透しているように思います。

それが大きな誤解だということは、世界中で行われている多くの研究によって証明されています。

体罰等の法的禁止のための科学的根拠(エビデンス)について : 子どもすこやかサポートネット (kodomosukoyaka.net)

そのことは、研究論文を読まなくても、保育者の「適切な保育」を見ればすぐにわかります。

自動車教習所で、危機に直面した時に事故を回避する適切な運転スキルを、ベテランが運転するドライブレコーダーの映像を見て学ぶように、親も、対応がむずかしい子育て場面でプロはどうするのか、「適切な対応」の実際を映像で見て学ぶ機会がたくさんあったらいいのにと思います。

2023.1.15