「タカシ 大丈夫な猫」 ~事故で2本の足を失った猫の成長記録に、子育ての極意がいっぱい~

タカシは2本足の猫。交通事故で右側の前後2本の足に重傷を負って、道端に横たわっているところをケイコさんに拾われました。
負傷した足を切断する大手術を乗り越えて、今ではケイコさんとその家族の深い愛に包まれ、見守られて、何事もなかったかのように街を走り回っています。

タカシは2本足で立ち上がることを覚え、歩けなくても走れば移動できることを発見し、家から庭に出る方法を編み出し、恋もした。彼女が軽々と木に登るのを見て、タカシはじっと木を見上げ、ついには2本の足で登ることに成功します。

私が一番スゴイと思ったのは、ケイコさんたちがタカシの力を信じて、余計な手助けをしないで見守り続けたこと。
家族はみんなタカシが大好きで、心から愛しているのだけれど、2本足で立てるように支えてあげるとか、外に出たそうにしたらドアを開けてあげるとか、彼女が去った木を呆然と見上げているタカシを抱き上げて木の枝に乗せてやるとか、そういうことを一切しないで、「タカシは、この課題をどう解決するんだろう」と気をもみながらも、ただただ見守るのです。

手出しをしないからこそ、タカシは先住の猫やご近所の猫がすることを見て、自分で考え、試し、チャレンジして、どんどんできることを増やしていく。
信じるって、なんて素敵なんだろう!
これって子育ての極意だよなぁ~
読み終えて、本当にすがすがしい気持ちになりました。

(苅谷夏子 岩波書店)

2023.4.17