「ルポ 虐待サバイバー」を読んで、虐待環境を生き抜いて親になった方々との出会いを思う

子育て支援施設での相談や、クリニックの相談外来などで親御さんの様々なお話を伺っています。

「子どもとうまくかかわれない。どうしてもイライラしてしまう」とか、「人に優しくしてもらえるわが子を見て、思わず『ずるい!』と感じ、怒りがこみあげてしまった」とか、そういったお話を伺いながら、「もしかしたらご自身が子どものころ、自然に湧き上がる子どもらしい感情を受け止めてもらえなかったり、理不尽に否定されたりすることが多かった方なのかな」と感じることがあります。

「私の母は毒親でした」とか、「私は機能不全家族の中で育ちました」などと前置きして話し始める方もいらっしゃいます。

子どもの心の健全な成長には、自分が感じるままの気持ちに親からの共感や承認が得られたり、甘えたい気持ちが受容されて安心したり、そうした経験の積み重ねが欠かせません。そのような感情体験ができないまま大人になり、親になっても、心の中の「傷ついた子どもの私」が今も生き生きとそこにいて、「私はしてもらえなかったのに」と、わが子にやさしくしようとする今の自分の足を引っ張る… そういうことは本当によく起こるのです。

支援者はその構造に気づいていないと、相談者をさらに傷つけてしまうことがあります。そうなると相手は、自分が傷つくことを恐れて支援者を拒否する流れになって、せっかくのサポートシステムが機能しません。

「ルポ 虐待サバイバー」(植原亮太 集英社新書)
この本では、そんな状況がリアルに鋭く解説されています。

支援を提供する人はもちろん、不適切な助言に傷ついて「支援なんかいらない!」と思っている人にも、ぜひ読んでほしい本です。

2024.1.15