今回も本のご紹介です。
巻頭言に「ぼくは、ぼくのままのぼくを、好きになりたかった」とあります。
そして私の仕事は、そういう人と出会い、一緒にこのテーマに向き合うこと…
小児科で相談外来を担当することになって2年。
以前は乳幼児の子育て相談が中心でしたが、現在は思春期のお子さんとの出会いも増え、むずかしいと感じています。
彼ら彼女らの気持ちに寄り添うには、彼ら彼女らが今体験している現実をどれだけリアルに想像できるかがカギで、私に求められる最重要な課題です。
心理系の本や雑誌、ケースレポートなどを片っぱしから読んでいるうちに、ふと「箸休め」(雰囲気が違う軽い読みもの)がほしくなって、この本を手に取りました。
だいぶ前に書評を読んで購入したものの、本棚に入れてそのままになっていたのですが、「さみしい夜にはペンを持て」という意味不明というか、どこか謎めいたこの書名に惹かれました。
いや~あ、この本は本当にすごい!
うみのなか中学校に通う中学生が、ある日うみのなか市民公園で不思議な体験をする… そんな一見ファンタジーなお話だけど、すごく深い内容がすごくやさしく丁寧に語られていて… ぐんぐん引き込まれ、その日のうちに読み切ってしまいました。遅読の私には、ありえない経験でした。
著者インタビューによると、自分と他者との関係性で悩みながら少しずつ自我を確立していく時期である中学生を読み手に想定して書いたのだそうですが… もちろん、たくさんの中学生にぜひ読んでほしいと思ったし、この本があればカウンセラーなんかいらないんじゃないかと思ってしまった程ですが… でも、それだけじゃない!
「そのままの自分を、好きになりたい」と思っている(つまり今は、自分を好きになれないでいる)たくさんの大人にも、ぜひ読んでほしいと思いました。
私も、スーパービジョン(自分が行った相談過程をスーパーバイザーとともに振り返る自己研鑽)でかなり厳しいことを言われて、ちょっとへこんでいたタイミングでしたが、この本を読んで師匠に指摘されたことに納得がいきました。なんとか仕切り直すことができそうです。
2024.2.26