ひろばで物を投げる2歳児を、見守ったお母さん

最近、子育てひろばで見かけたできごとです。


2歳の男の子が、ままごとコーナーにあったステンレスのボール投げました。
あっ と思いましたが、たまたま他の人がいない方向だったので制止しないで見ていると・・・
ボールは飛んで行った先でころがったあと、見事にくるくる回りはじめました。
不安定な回転で床に触れるたびにカタカタと音がして、大人の私も「まぁ おもしろい動き!」と思いました。
動きが止まると、男の子は駆け寄ってボールを拾い、元の位置まで戻ってまた投げました。
今度はさっきのように回りません。三回目も四回目も・・・何回やってもあの回転は再現できません。
この挑戦(実験?)を黙って見ていたお母さんが、「やりきった頃合い」をみはからったように声をかけて別の遊びに誘うと、男の子は満足げな表情ですんなりとついていきました。
素敵なお母さんです。私も、さわやかな気持ちになりました。

もしもっと早い時点で止めようとしたら、子どもは「反抗」して泣き、親は「言うことを聞かない子」にイライラしたかもしれません。
ポイントは、お母さんがこの様子をしっかり「見ていた」ことです。

男の子は毎回「元の位置に戻って」、他の人がいない方向へ投げているのです。
「今のところは危険がない」と判断して見守っているので、そこに他の子が来るなどして危険な状況になればすぐ対処できます。
投げているものも小さくて軽いボールなので、万が一制止が間に合わなくても大けがをさせるような事故にはならないでしょう。
2歳児なりの判断(人に当たらないようにしている)を尊重したうえで、判断の甘さで起こりうる緊急事態に対処できる態勢をとり、万が一の時は謝る覚悟があるから、見守れたのだと思います。

そのおかげで、男の子はたくさんの宝物を手に入れることができました。
運動力学的な発見や物の性質と音の関係など「科学的思考の芽」、好奇心が満たされる喜び、何度失敗しても繰り返し挑戦する根気、いつの日かやりたいことを見つけチャレンジする原動力・・・
見守ることは、子どもの力を信じることです。親に信じてもらえる安心感が、「自分を信じる力」の源になります。

見守ることが苦手で、どうしてもコトが起きる前に手出し口出ししないではいられない方も多いように思います。
ご自身がそういう親御さんに育てられ、「あなたは自分では正しい判断ができない」という裏メッセージをたくさん受け取ってきた方かもしれません。
気づけば、連鎖は止められます。まずは自分が、自分を信じる力をつけましょう。
あなたの気持ちを「信頼できる誰か」に話して、受け止めてもらえる安心感をたくさん経験してください。身近にそういう人がいなければ、支援センターやひろばのスタッフに話してもいいし、電話相談やメール相談でもいいと思います。

桜の季節に、一歩踏み出すチャレンジも素敵です!
その一歩が、きっと次の一歩につながります。

2015.3.28