「おかわり」の要求にどこまで応じてもいい? ~東社協保育部会研修会の質問に応えて①~

6月18日、東京都社会福祉協議会保育部会主催の研修会で講師を務めました。
終了後たくさんのご質問をいただきましたが、時間の都合でほとんどお応えできず、申し訳ありませんでした。多くの親御さんや保育者、支援者にも参考になる内容だと思いますので、この欄で少しずつ考え方を書いてみようと思います。

今回のテーマは、食事の「おかわり」について
ご質問は、 「食事のおかわりは、どのくらいまでならOKか。食べ過ぎが心配」という相談をよく受ける。1~2歳だと「『もうないよ。おしまい』と言っても、泣き叫んで困る」というケースもあり、どう対処すればよいでしょう?  というものです。

「どのくらいまでならよいか」は個人差も大きいし、一般論で「このくらい」と言うのはなかなか難しいですね。量を聞かれると、量を答えなければならないような気分になりますが、よく読むと相談者が聞きたいことは「食べさせてもよい量」ではなさそうです。「食べ過ぎが心配」なのですから、「ほどほどのところでやめたい」という意思があるわけで、量の目安は相談者が分かっていることになります。相談のキーポイントは、受け入れがたい子どもの要求に、きちんとNOを言えない親の心情の部分です。

NOと言って、子どもが怒ったり泣き叫んだりしたら、相談者はどう感じるのでしょうか?
まずは「気持ち」を聞いてみてください。いろいろなケースがありますが、よくあるのは「子どもの心に傷が残ってしまうのではないかと不安になる」といったものです。「ああ、お子さんの要求を受け入れないと、傷つけてしまいそうで不安になるのですね」と、その気持ちを一度しっかり受け取ったら、「それだけ真剣に、お子さんのことを考えていらっしゃるのですね」「ちゃんと育てなければと思うからこそ、いろいろ不安になることってありますよね」などと、その不安を「あって当然のこと」として認める言葉を添えるのもよいと思います。専門家に認めてもらうことで相談者は自信を手に入れ、「泣いても無い物は無い」「ダメなものはダメ」と言えるようになっていくのではないでしょうか。

子どもが道路に飛び出そうとしたり、危険なものに触ろうとしたりすれば、迷うことなくその行動を制限するはずです。叱ることは、子どもに「安全な範囲」を教えることで、傷つかないように自分を守れる力を育てるための基本です。過食を防ぐのも、同じ。その程度の傷は、転んだ時のすり傷と同じですぐに治りますし、少々痛い思いをしながらケガをしない歩き方を学習するのも大事な経験です。後々まで傷が残るような叱り方とは、親の都合で理不尽に子どもの人格を否定し、気持ちを封じ込める関わり方が長く続くようなケースです。

泣かれた時の対処法ですが、コツは「危険な行動(過食を自己コントロールする力をつけないと、将来健康を害するリスクが大きくなります)」を制限して、「もっといっぱい食べたいね」「もっとあったらよかったのにね」などと「気持ち」を認めることです。転んだときに「ちちんぷい」「痛いの痛いの飛んでけ~」と痛みをケアしてもらえると、みじめな気持ちにならないでじきに泣きやめるのと似ているかな。

(2010年 6月 30日)