「骨のある魚」が食べられる時期は? ~東社協保育部会研修会の質問に応えて③~

6月18日、東京都社会福祉協議会保育部会主催の研修会でいただいたご質問について、何回かに分けてお応えしていこうと思います。

今回は、「骨のある魚」について 考えてみます。
保育園の調理師さんからのご質問です。
「口腔機能の発達から見て、自分で骨をより分けられるようになるのは何歳ころ?」 に続いて
「ほぐしてあげても小骨が混入している可能性はゼロにはならない」と書かれています。

たしかに、どんなに気をつけても取りきれなかった小骨がほぐした魚の中に残ってしまう可能性はありますね。日々子どもと接していらっしゃるからこそ、万が一の事故もないようにと真剣に取り組んでおられるのでしょう。

口の中で異物を感じて舌でより分け、飲み込む前に取り出すことができないうちは骨のある魚はあげない方が安全・・・でしょうか?
口の中で舌を前後左右に自由に動かして食物を扱えるようになるのは1歳過ぎころなので、それ以前はよくよく気をつけて混入を防ぐ必要がありそうですが、とはいえ大人でもうっかり小骨を飲みこんで、喉にひっかかってしまうことはあるわけですから、何歳になれば大丈夫とは言えない感じがします。
ならば、保育園では骨のある魚は出さない方が無難でしょうか?

「無難」な保育は、子どもの安全を最優先しているように見えて、実は危険な保育だと私は思っています。子どもはたくさんの「危険」を体験することで危険を察知したり、危険を避けたり、安全に対処する方法を身につけるのだと思うのです。魚には骨があること、気をつけて真剣に食べないと危ないことも、ちゃんと子どもに体験を通して教えるのが大人の役割のような気がします。家庭でがんばってほしいところですが、親世代も骨のある魚を食べる機会は少なくなっているようですから、保育園の給食は貴重な経験の場という考え方もできるのかもしれません。

保育園で骨のある魚を提供する場合の留意点を、思いつくまま書いてみます。
1)子どもをよく観察する:咀嚼が苦手な子は把握しておき、特に注意深く見守る。口の中で異物に気づいた様子が見られたら、優しく声をかけて魚と一緒に吐き出させる。
2)食事に集中させる:神経を研ぎ澄ませ口の中の感覚に敏感になれるように配慮する(骨だけを出すのは難しくても、異物の存在に気づければ、魚と一緒に吐き出すことはできる)
例)ふざけている子などは、食品の話題で関心をひいて落ち着かせる。取り分けておいた小骨を見せ、ほぐし身を口に入れる時に「お魚だよ。小さな骨があるかもしれないから、お口の中でよーくもぐもぐして、こんなのが混ざっている感じがしたらベエーって出してね」などと声をかける)
3)受診体制を整える:近くの耳鼻科医と緊急時の対応について事前に話し合いを持ち、もし骨がノドに刺さってしまったような反応や訴えがあった場合は、すぐに受診する。
4)保護者の理解を得る:日ごろからこうした園としての考え方や、安全への配慮、受診体制などについて、保護者会や園だよりなどで繰り返し伝えるようにする。

もし小骨を取って魚の身をほぐすのが調理師さんのお仕事だったとしても、当然調理師さんだけが責任を負うのではなく、園長先生や保育士、栄養士、看護師など各職種の方々がそれぞれの役割を認識して協力し合うのでなければ、このような挑戦はできません。こうした連携がスムーズに行かない施設であれば、「給食では骨のある魚は出さない」という選択も、もちろんアリだと思います。

「発達から見て一般的に何歳から可能か」という判断ではなく、「ウチの園ではどうするか」を職員みんなで話し合われてはいかがでしょうか?

(2010年7月20日)