渡辺久子先生を講師にお招きしての勉強会があると知って、すぐに参加の申し込みをしました。書物では幾度も出会って感銘を受けていた先生です。ナマでお話を伺えるチャンス、絶対に行かなければと思いました。大正解でした!
話の内容ももちろん素晴らしかったのですが、先生の障害児に向き合う情熱やひたむきさ、真摯な姿勢には聴き手を圧倒するパワーがみなぎっていて、それはもう「すごい!」としか言いようのない迫力満点の勉強会でした。
ご紹介したい印象的なお話がたくさんあって何を取り上げようか迷ってしまいますが、今回は発達障害の子どもを守る「環境としての親」について書いてみます。発達障害は脳の異常によって起こるものと考えられていますが、子どもの脳は柔軟なので、心の痛みと危険を避ける安全な環境に置いてあげれば、脳内に新しい回路ができて症状はかなり改善し、自分で衝動をコントロールできるようになるそうで、先生が駆け出しの若い医師だったころから長期にわたって関わってこられた患者さんが、今は30代40代になってきちんと就労し心豊かな社会生活を営んでいらっしゃる様子が紹介されました。
発達障害の子にとって「安全な環境」とは、どのようなものでしょうか。子どもの中に不安が湧きあがる環境を避ける ― たとえば音に過敏な子なら、静かな環境に置いてあげればいいわけですが、これが実は簡単ではありません。苦手な音に反応して不安になり、困った行動を起こしている子に向き合う親は、当然不安定になりますから大声で叱ったり力づくで押さえつけたりしてしまう。それがさらに子どもを不安にさせ、困った行動がエスカレートする・・・そんなとき先生は「徹底的に親を支える」ことが必要だとおっしゃいます。障害児を育てるのは本当に大変なのです。親は疲れ切っています。親は、障害児の一番身近な環境なので、親が静かに関われるように、親を支えることが重要なのです。親が寝られる時間を確保してあげるだけで、親子の安定的な関係が築かれ、子どもの症状が改善したといった経験談は、保育園や支援センターなどで親子と関わる私たちにも大いに参考になると思いました。