決まり文句だって、いいじゃない ~分からないことは聞いてみる~

ある勉強会で出たご質問です。

電話口で泣き続けて、言葉にならない・・・
明らかに電話はつながっているのに、無言のままいつまでも話さない・・・
そんなとき、相談を受ける側もいろいろ考え、迷ってしまう。

○ そんなとき、支援者の心にはどんな感情が浮かんでいるのでしょう。
☆ 今はまだ話せないという、相談者のその気持ちに寄り添って待ったほうがいいことは分かっています。
でも、待っているうちに切れてしまうかもしれない。きっと、すごくエネルギーを使って電話してくれたのに。
やっと踏み出した最初の一歩かもしれないのに、その糸がプツンと切れてしまうかもしれない。
何か言えたら、つなぎとめられたかもしれないのに・・・
○ 自分を責める感じ?
☆ そうですね・・・
○ ☆さんは、「何も言わない」ということができたのだと思います。
今は話せなくても、相談者が電話しなければよかったと思うような対応をしなければ、きっと次につながります。
いつか話せるときがきたら話せればいいですよね。相手は家族や友達でも、他の相談機関でもいいし。
こちらが不安になって「子育てって大変ですよね。つらいよね」などと、相手が話してもいない気持ちをこちらが
言ってしまったらNGだけど、☆さんは不安に耐えて何も言わないで待った。それはそれで、充分だと思います。
◇ 泣いてくれればまだいいのです。泣けるだけで癒しになることもありますし。
いつまでも無言だと、待っていていいのか迷います。
相談者自身が自問自答しながら考えているのが分かるときは、 こちらも割とゆったり構えて待てますが、
待ってほしいのか反応してほしいのか分からなくて、迷っているうちに切れてしまったり
○ そうですね・・・分からないことは聞けばいいですね。何と言いましょうか?
そういうときにどう言うか、ここで考えておけば次のときにラクです。
☆ そうですけれど、決まり文句を覚えておいて機械的に使っても、気持ちが入ってない感じがして
○ ああ、なるほど、それもそうなのですけれど、逆もありませんか? 決まり文句を言ったのだけど、
言ってみると気持ちが動いて、あとから心がついてくるみたいな

子どもが保育園に行っていた頃、病気で休む連絡をして「お大事に」と言われると、決まり文句でもうれしかったものです。職場でトラブルがあってお迎えが間に合わなくなり、電話をしたときは、保育士さんの「大丈夫ですから、落ち着いて事故のないようにいらしてください。お待ちしています」という言葉に涙が出そうでした。
「もう~ 困りますよ!」と怒られても仕方ない場面ですし、別の園でそう言われたこともあります。そういう方が先輩の「大丈夫ですから、落ち着いて・・・」というセリフを傍で聞いていて、まねしたとしたらどうでしょう。初めはぎごちないかもしれませんが、何度か言っているうちにそんな優しい気持ちがわいてくるような気がします。

無言の時間が続いて、待っていていいのか迷ったら、たとえば
「だいぶ長くなりましたが、このままお持ちしていて大丈夫ですか?」
と聞いてみたらどうでしょう。
人の気持ちはその人にしか分かりません。分からないことは、聞いてみるのが一番です。

2012年5月6日