ヘタな絵でも、ほめたほうがいいの? ~認めること、気持ちを伝えることを大切に~

4月27日、NHK千葉放送局に伺いました。チバスタというFMのラジオ番組で、田村亮さん・荻野目洋子さんがご自身の子育てを語る公開生放送。会場には、なんと5倍の抽選をくぐりぬけた100人のお客様。私は千葉県民から寄せられた質問や、田村さん・荻野目さんの子育てトークにコメントをはさむ講師として呼ばれていました。お二人の子育て談はとても素敵で、楽しい時間を過ごさせていただきました!

このコラムのテーマ「うちの子はすごく絵がヘタなんだけど、それでもほめたほうがいいんですか?」は、その番組アンケートからのご質問です。番組の中では限られた時間で次の質問に移っていくので、十分に話せなかった思いが残りました。おもしろいテーマなので、ここで書いてみようと思います。

「絵がヘタ」にも、いろいろなケースがありそうですね。ザックリ分けて、次の2パターンについて考えてみます。

A:本人は絵が好きで一生懸命描いているのだけれど、親の目にはヘタとしか見えない
B:本人の中で絵を描くことに気持ちが向いていなくて、ヘタというより雑な感じ

Aの場合は、技術的な「うまい・ヘタ」ではなく、一生懸命描いたことを認める言葉をかければよいので、そうむずかしくないと思います。子どもが一生懸命取り組んだ結果なら、必ず「気持ちが入っている」ので、親がそこに気づいていることを伝えればよいのです。親にはヘタに見えたものを、専門家は「素晴らしい」と言うかもしれないのですから、「うまい・ヘタ」の話(絵の評価)はしないほうがよく、その絵を見てどう感じるのかを気持ちを表す言葉で伝えてみましょう。

「はねた線が、弾んでいる感じで楽しそう」「この色の感じ、ママは好きだわ」などなど。ほめるというより、子どもが取り組んだ成果に関心を示し、認めるということです。

「空をそんな色で塗ったらおかしい」とか「パパはそんな顔してない」とか、「そこはこういうふうに描いたほうがいい」とか、子どものありのままの表現を否定するような発言はNGです。

Bの場合はどうでしょう。ヘタな絵は、「描きたくないのに、描かされるのはイヤだ!」とか、「しょうがないから、先生に付き合ってやってんだ」など、子どものネガティブな気持ちの表現なのかもしれません。

かつて自分なりに気持ちを込めて描いたものが認めてもらえず、いやな思いをした古傷がうずいて、攻撃的な反応をしている可能性もあります。「どうせヘタなんだ」という気持ちがあれば、わざと適当に描くかもしれません。そのほうが、本気で描いてうまくいかないより傷つかない感じがするかな・・・

子どもの絵を見て「気が入っていない」「いやいや雑に描いている」と感じたら、感じたことを伝えてみるのはどうでしょう。

「いやいや描いたような感じがするけど、絵を描くのはきらい?」
「なんだか『描きたくない!』って気持ちが伝わってくる気がする・・・」
そんな言葉をきっかけに、子どもの心の中にくすぶったイヤな気持ちが外に出るチャンスができたら素敵です。

ネガティブな気持ちは、言葉で表現して、誰かに受け取ってもらえると、手放すことができるのです。

みなさんにも、反論や説教をしないで聴いてくれそうな人に出会った時に思いきって話したら、突っ張っていた力がすう~っと抜けるような感じがした・・・そんな体験がありませんか?

子どもの口から「僕はヘタだから」などの否定的な言葉が出ると、つい「そんなことないよ」と否定したくなりますが、それでは積もり積もった気持ちを話せなくなってしまいます。子どもが感じていることを思いっきり表出できるように、まずは「そうか、そんなふうに思っていたのか・・・」と真剣に聴きつづける姿勢を示してください。

2013.5.6