「育児相談」という専門性

10月18日、NPO法人バディチーム主催の支援者向けの講座「子育て支援塾」の1日目が終わりました。

午前10時から午後4時30分まで、「育児相談練習帳」をテキストに、ぎっしりと中身の詰まった研修で、ご参加いただいた皆さんは本当にお疲れになったことと思います。講師を務めた私といたしましては、受講生の皆さんの熱心なやりとりからたくさんの学びがあり、大変充実した濃密な時間を共有できたこと、何よりありがたく思います。

今回の研修の中で、子どもの小食に悩む母親の相談場面を実際に体験してみるロール・プレイを行いました。漠然とした質問「どうしたらもっと食べてくれるんでしょうか」に、パターン化した一般論のアドバイスをする前に、相談者の気持ちをていねいに聴いてみましょうという課題です。相談者・支援者の役割を決めて、10分ほど会話を進めていただきました。そのあとの話し合いで、相談者役を演じた方から
「共感して聴いてくれたのはよかったけど、私は今現実に困っているので、解決策を一緒に考えてほしかった」といった趣旨のご発言がありました。
確かに相談者は今、目の前にいる子どもに今日どうするか、待ったなしの育児に困って相談しているのだという認識を、支援者側はいつも持っている必要がありますね。

育児相談はカウンセリングではない(多くの場合、相談者はカウンセリングのつもりで相談するわけではない)ので、短時間の中で解決のためのアドバイスを求められることが多いと思います。育児相談を受ける人が、カウンセリング的な関わり方の基礎となる知識や技術を身につけることは、最低限相手を傷つけないためにとても重要なことだと私は思っていますが、その一方で、心理カウンセラーとは違う役割を担わなければならないとも思います。

現在、育児相談は保育士や心理職、医療職(保健師・助産師など)などが担っていて、それぞれの専門領域の相談場面では適切な対応がされていのだと思いますが、保育士が医療や心理分野に弱かったり、心理職が保育や医療に疎かったり、医療職の発言に心理的な配慮が欠けていたり、たくさんの問題点が見えてきていることも事実です。

たとえば「育児相談専門士」といった形で、新たな専門職の必要性が社会的に認知され、きちんとした養成システムができたらステキです。
私に何ができるか、一生懸命考えていきたいと思います。

(2009年10月19日)