フタ不要のボタン 「気づく」ということ

私の通勤時間は片道2時間。自転車で最寄り駅に出た後、電車を2回乗り換え、到着駅から勤務先まで徒歩20分。ちょっとした「旅」気分ですが、新聞や本を読むには程よい時間とも言えます。

朝の出勤時はまだ元気があるので、さほど苦にならないのですが、問題は帰り。乗り換えのタイミングが悪く、吹きっさらしのホームで電車を待つのは、空腹も重なってなかなか辛いものがあります。イヤなことがあった日や、疲れがたまっているときなどは、自販機で温かい飲み物を買って自分をねぎらうことにしています。

私のお気に入りは、ドリップのコーヒーが紙コップで出てくるタイプ。コインを入れ、モカブレンドを選んで、「砂糖なし」のボタンを押します。私は大の甘党ですが、コーヒーはブラックに限ります。自販機も進化したもので、「砂糖クリーム入り」のほか「砂糖多め」なんていうボタンがあるものもあります。三角の矢印が点灯してピッピッピと鳴ればできあがり。プラスチックのフタが閉まって、取り出し口の扉が開きます。
でも・・・私は今ここで、そう、寒いホームで温かいコーヒーを飲もうと思っているのです。「フタはいらないのに」と、買うたび気になっていました。

それが、あったのです!
「フタが不要の場合は先に押してください」というボタンが。「あぁ~あるんだ~!」思わず声が出て、それから笑いが込み上げました。何度も買っていたお気に入りの自販機だったのに、いつも「フタはいらないのに」と思っていたのに、一度気づいてみれば目の高さで赤いランプが点いてとても目立つボタンなのに、昨日まで全然見えていなかった。本当に不思議です。

これって、相談の真髄ですね。ちょっとしたきっかけで、いつもの「馴染んだ視点」が変わると、思いがけない選択肢が見つかって、「ずっと困っていたこと」が案外スッキリ解決したりする。そんな「気づき」のチャンスを、提供できる支援者でありたいと改めて思ったできごとでした。

(2009年12月17日)